2017年02月01日

ムカシズム「ねこ」

「ムカシズム」カテゴリの記事は
約一年ぶりの更新。
これは昨年末に実家に帰ったときに、
母から聞いた話。

大平家では、猫を飼ったことは
なかったのだが、奇妙に我が家と
縁のあった猫がいたらしい。
私はまったく知らなかったが……。



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1992年頃?


8歳年の離れた弟がいる。
彼が3、4歳の頃の話。

隣の家にはその弟よりひとつ年上の
男の子、キョウちゃんがいた。
キョウちゃんはある日、どこからか
野良の子猫をみつけてきていた。
黒白の猫だ。

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おそらくこのタイプの猫。


家で飼いたいが、家族に反対され、
友達である弟とふたり、子供だけで
猫を育てる計画を立てていた。


が、所詮は子供の企み。
今度はうちの母にみつかった。
こうして子猫は、大平家でちゃんと
飼おう、という話になったようだ。


とはいえ、我が家では猫を飼った
ことはなく、猫グッズもない。
家でひとり(1匹)留守番をさせる
わけにもいかないだろうと、
母は猫を車に乗せ、買い物に出た。

が、慣れない車移動のためか、
途中で猫は車から降りたがった。
世話をするため車をとめ、ドアを
開けたら、子猫は外へ逃げていって
しまったのだった。

猫はどこにも見当たらない。
元々野良猫なのだ。仕方ない、と
母はしょんぼり家に帰った。


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数日後。
母はひとりで家にいた。
すると、窓の外からあの子猫が
こっちを見ている。


猫が帰ってきた!


母は庭に出てみたが、猫はニャーと
どこかに走り去ってしまった。

車から猫が降りたのは家から歩いて
20分ほどの距離がある。
車中で道を覚えるられるのだろうか。
謎は残った。


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それから5年あまり。
庭にたびたび、黒と白の野良猫が現れ
「ふん」を残すようになったと、母は
困っていた。
近寄ると、猫は逃げていく。
ついにペットボトルを配置した。


母はあの猫のことを忘れていた。


しかしふと、思い出した。
そういえばあの黒白の毛並みは……。
気付いた頃には、猫はペットボトルに
恐れをなし、庭に現れなくなっていた。


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明くる年の秋、台風が迫っていた。

古い記憶だが、鹿児島の台風は
東京とは比べ物にならなかった。
家の戸締まりをしていた母。
わずかに開いている屋根裏の扉も
きれいに塞ぎ、大平家は台風に
備えていた。


台風が通りすぎ……。


静かになった家のどこからともなく
猫の声が聞こえてきていた。
ニャーニャーニャー。
だが、どこを探しても猫はいない。


天井から聞こえてくるのだ。


もしやと思った母は、屋根裏の
扉を開けた。
よくみると、猫が入った形跡が
ある。が、姿は見えない。

屋根裏と言っても、部屋ではない。
天井は低く、細い空間をぐるりと
まわると、階段の物置に繋がって
いる。
狭く広い空間……子供達にとっては
格好の遊び場だったが、大人の母が
入れるものでもない。
仕方がないので扉を少し開け、猫が
逃げ出せるようにしておいた。


おそらく、庭を追い出された猫は、
たびたびこの屋根裏を利用していた
のである。
天井から猫の声が聞こえなくなった。


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さらに5年ほどの月日が流れた。
母が買い物に行こうと駐車場に出ると、
そこには黒白の猫が待っていた。
毛は所々抜け、年老いた猫だ。


あの猫である。


猫は母の足元にすりより、ゴロゴロ
と甘え始めた。
今までになかったことである。

そこに一緒にいた弟(冒頭の弟)は、
猫が大好き。
お母さんばかり、いいな!
と、自分も猫を撫でようとするも、
見向きもしない。


猫は母だけになついていた。
ニャーニャーニャー。


あの猫が、お別れをしにきたんだ。
母はそう思ったという。



その日以来、大平家に猫が現れる
ことはなかった。


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以上、不思議に何度も再会し、
不思議に何度もすれ違ってきた
猫と母の話。


posted by ズム at 02:05| Comment(3) | ムカシズム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月06日

ムカシズム「ニブイチ」

2009年頃


ニブイチの選択を誤ることは、人生に
おいて多々あることである。
その中でも、どうでもいいが微妙に残念な
出来事を紹介したい。


当時働いていた雀荘の入ったビルの裏手で、
ビルの解体作業が始まった。
ふたつのビルを解体して、別のビルを建てる
らしい。
工事用の囲いに書いてある表示を見ると、
地下数階、地上数十階のかなり大きな
ビルができるようだ。


大平はひらめいた。


解体されるビル、そしてその後建設される
ビルを毎日同じ場所から写真におさめよう。
それをパラパラマンガにして小銭を稼ぐぞ。


大平の挑戦が始まった。


が、2ブロックの広い土地を一度に撮ることは
できない。
駅側と、駅から遠い雀荘側。
どちらかのビルに絞った方が絵としても具合が
よい。

そんなわけで先に解体が始まったこともあり、
駅から離れた勤務先の雀荘に近い方のビルの
姿を追うことにしたのである。


ビルはみるみる低くなっていった。
毎日目に見えてビルが縮んでいくので、自分の
作品にひそかに手応えを感じながら写真を撮り
続けた。


が。


ビルがすっかりなくなってしばらく経っても、
まったく建設作業が始まらない。
風景が変わらないので写真もすっかりストップ
していた。


たまに思い出しては、まだか、まだか…。


気付いた時には私が写真を撮っていなかった方の
ビルの跡地に「渋谷ヒカリエ」がオープンして、
センセーションを巻き起こしていた。


やはり物件を選ぶなら駅近である。


posted by ズム at 02:56| Comment(0) | ムカシズム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年12月24日

ムカシズム「サンタ」

1985頃:

幼稚園児だった当時、近所の西友8階は
私と弟にとってパラダイスであった。
おもちゃ売り場である。

大人が買い物をしている間、ここで
おもちゃの物色をしていていいことも
しばしばあった。


  ◆


ある日。
その8階に行ってみると。
信じられない光景に目が丸くなった。


サンタクロースがいたのである。


実はその先日、幼稚園にサンタが来たのである。
そのサンタいわく、サンタは赤い手帳と黒い手帳を
持っているらしく、よいこの名前を赤い手帳に、
悪いこの名前は黒い手帳に書いてあり、黒い手帳に
名前のある子はおもちゃをもらえないそうだ。

園長先生が言った。
「この幼稚園の子はみんないいこです。
 黒い手帳に名前のある子なんて、いませんよ」

するとサンタが黒い手帳にある名前を読み上げた。
園にはいない子だった。
園長先生もみんなも安心して笑っていたが、私は
もう名前は忘れてしまったがその子のことを考えて
固まっていた。


どこの誰なんだろう。
いったいどんな悪さを?
おもちゃがもらえないなんて!!


その日はこわくて遅くまで眠れなかった。
おそろしい。あのサンタはニセモノだ…。


  ◆


そんな折に西友に本物が現れたのである。


「サンタだ(・□・)!!」


小さい大平は叫んだ。


「サンタは西友でおもちゃを買っていたんだ!」


これは特ダネだ。
あした幼稚園のみんなに自慢しよう。
そんなことを考えていたら、サンタが言った。


「サンタも大変なんだよ…」


今思うと異様にジワジワくるこのサンタの呟きに、
小さい大平は我に返った。

そっか。
サンタは大変なんだ。
このことは私とサンタだけの秘密にしよう…。


  ◆


数日後、クリスマスの朝が来た。
なんとサンタが来た。
白いニセのひげを付けて、玄関から来た。
バービーちゃんの服とレゴをくれた。

でも小さい大平はこのサンタもまたニセモノだと
分かっていた。


本物は西友にいるんだ…!


でもおもちゃは有り難くもらうことにしたのである。


  ◆


それから20数年が経ち、ふと思い出したのが
玄関からやってきたニセサンタである。
定番のおとうさん、ではない。
彼はどこから来たのだろう。

母に聞いてみた。

「あれはデパートのサービスだったんだよ」


当時のデパートは屋上に小さな遊園地があったり
エスカレーターの乗り口でおじぎするだけの人が
いたりと、とにかく景気がよかったのである。
そんな時代だからこそあった、クリスマスの朝に
サンタが直接プレゼントを届けてくれるサービス、
だったらしい。
このサンタもやはり「大変」だったことだろう。


謎はとけた。
そして子供なら誰もが迎える過渡期、すなわち
サンタがいるかいないか問題をも、私はなんと
スムーズにくぐり抜けたのだろう。


そして教訓も残った。


サンタは皆、大変なのである。


posted by ズム at 05:21| Comment(2) | ムカシズム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする