2015年12月24日

ムカシズム「サンタ」

1985頃:

幼稚園児だった当時、近所の西友8階は
私と弟にとってパラダイスであった。
おもちゃ売り場である。

大人が買い物をしている間、ここで
おもちゃの物色をしていていいことも
しばしばあった。


  ◆


ある日。
その8階に行ってみると。
信じられない光景に目が丸くなった。


サンタクロースがいたのである。


実はその先日、幼稚園にサンタが来たのである。
そのサンタいわく、サンタは赤い手帳と黒い手帳を
持っているらしく、よいこの名前を赤い手帳に、
悪いこの名前は黒い手帳に書いてあり、黒い手帳に
名前のある子はおもちゃをもらえないそうだ。

園長先生が言った。
「この幼稚園の子はみんないいこです。
 黒い手帳に名前のある子なんて、いませんよ」

するとサンタが黒い手帳にある名前を読み上げた。
園にはいない子だった。
園長先生もみんなも安心して笑っていたが、私は
もう名前は忘れてしまったがその子のことを考えて
固まっていた。


どこの誰なんだろう。
いったいどんな悪さを?
おもちゃがもらえないなんて!!


その日はこわくて遅くまで眠れなかった。
おそろしい。あのサンタはニセモノだ…。


  ◆


そんな折に西友に本物が現れたのである。


「サンタだ(・□・)!!」


小さい大平は叫んだ。


「サンタは西友でおもちゃを買っていたんだ!」


これは特ダネだ。
あした幼稚園のみんなに自慢しよう。
そんなことを考えていたら、サンタが言った。


「サンタも大変なんだよ…」


今思うと異様にジワジワくるこのサンタの呟きに、
小さい大平は我に返った。

そっか。
サンタは大変なんだ。
このことは私とサンタだけの秘密にしよう…。


  ◆


数日後、クリスマスの朝が来た。
なんとサンタが来た。
白いニセのひげを付けて、玄関から来た。
バービーちゃんの服とレゴをくれた。

でも小さい大平はこのサンタもまたニセモノだと
分かっていた。


本物は西友にいるんだ…!


でもおもちゃは有り難くもらうことにしたのである。


  ◆


それから20数年が経ち、ふと思い出したのが
玄関からやってきたニセサンタである。
定番のおとうさん、ではない。
彼はどこから来たのだろう。

母に聞いてみた。

「あれはデパートのサービスだったんだよ」


当時のデパートは屋上に小さな遊園地があったり
エスカレーターの乗り口でおじぎするだけの人が
いたりと、とにかく景気がよかったのである。
そんな時代だからこそあった、クリスマスの朝に
サンタが直接プレゼントを届けてくれるサービス、
だったらしい。
このサンタもやはり「大変」だったことだろう。


謎はとけた。
そして子供なら誰もが迎える過渡期、すなわち
サンタがいるかいないか問題をも、私はなんと
スムーズにくぐり抜けたのだろう。


そして教訓も残った。


サンタは皆、大変なのである。


posted by ズム at 05:21| Comment(2) | ムカシズム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする