2015年09月16日

ムカシズム「学生寮」

【ムカシズム】
というコーナーを作ることにしました。
昔あった、妙な話を連載します。


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1998年頃


学生時代は、寮で暮らしていた。

この寮が凄くて、家賃は月々600円。
その他に光熱費が6000円ほどかかるが、学校まで
徒歩数秒という好立地だ。

そのかわりではないが、とにかく古くて汚い。
水の出が悪いシャワーを浴びるために毎日行列を
しなければならず、トイレも共用で当然の和式。
冷房がない上に網戸がないので夏は窓も開けられず
サウナ状態。
廊下や階段などは何10年も貼っては剥がされ続けた
革マル派のビラだらけで、とにかく物々しかった。

そして部屋は10畳ほどの「4人部屋」である。



そしてなぜか、入学式当日まで入寮できない。
これには理由があった。


入学式を終えた新入生のズムは、はじめて寮へ。
この日の夜は各フロアごとに歓迎会が行われる。
伝統行事らしい。


しかし。
そこで同部屋の先輩たちが恐ろしい問題児だらけ
なのと、とにかく厳しい寮の戒律を知らされる。

・門限は18:00
・消灯は20:00?
・下着は白の無地のみ??
・トイレットペーパーは1回20cmまで???
・などなど

よく覚えてないけど、たくさん。
部屋の明かりを消して蝋燭の灯をともし、この
寮則を先輩が読み上げると、新入生は誓約書に
拇印を捺すのが慣わしらしい。
そういえば廊下に去年の誓約書が貼られていた。
知り合ったばかりの同級生達と震え上がった。


そして早すぎる消灯の時間に。



寝たふりをしている可哀想な新入生達は何故か
この後もう一度、ひとつの部屋に集められた。



先輩達「ごめんなさい!今のは全部、嘘でした」



寮の本当の伝統行事は、新入生を嘘で脅かすこと
だったのである。
【嘘コン】と呼ばれていた。


悪趣味な行事のようだが、この夜、新入生達は
新生活の不安から解放され、来年の嘘コンは
どうやるか、遅くまで楽しく話し込むのである。

フロアの寮生は、とにかく仲良くなった。



1年が経ち。

ついに入学式の日がやってきた。
我々にとっては嘘コンの日である。

数人の新入生は母親と一緒に荷物の搬入に来たが
私は「異常に気難しい先輩」という役柄だったので
ツンとしていた。


娘がトイレに立ったのを見て、新入生の母親が
小声で私に声をかけてきた。


「あれ、まだやってるの? う・そ・こ・ん」


え??


「私、この寮のOBなのよ」


え!!


娘が戻ってくると、母親は何事もなかったかの
ように作業を再開した。



せまい、暑いと文句を言いながら、4人で楽しく
暮らした、懐かしくて散々で懲り懲りな日々。
その寮も数年前に取り壊され、ワンルーム型の
きれいな寮が建てられたという。


posted by ズム at 03:09| Comment(4) | ムカシズム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする